「見えない人の心を戯作で表現したい」そんな決意を抱く戯作者の孫娘おけいは、次回作のネタ探しに苦しんでいた。そんな折、版元でおけいの想い人の勘助が、お菓子競べへと誘う。
そこで羊羹舟と呼ばれる菓子の型が宙を飛ぶという、とんでもない現場に出くわす。
もしかしたら付喪神かもという弟・幸太郎の言から、羊羹舟に秘められた想いを探ろうとするおけい。
やがて、手がかりが加賀にあると知り、関係者を訪ね歩く。そして加賀で一二を争う菓子職人兄弟の葛藤と苦しみに辿り着く。
おけいは、増長し上手く話せなくなった幸太郎との関係を振り返りつつも、羊羹舟に込められた持ち主の想いを一気に筆に託した。
「人と人との思いやる心」に涙する時代小説の傑作!