「特別なこと、日高君とならしてみたいよ」 親の転勤で東京からヨバリ町へと引っ越してきた日高湊人(14) 肩身の狭い田舎暮らし、余所者として扱われる日常は、永井都香砂という一人の美しい転校生によって蚕食されていく。 初対面であるはずの永井は、初日から日高に異常な執着をみせ、その言動は人間らしからぬものだった。永井の目は、時として黒く窪んだようにも窺えたが、しかし、そうした不可解な現象は日高にしか視えない。 永井は果たして人間なのだろうか? そんな疑念を他所に、彼の執拗さは増し、やがてその黒い腫瘍は日高に関わる周囲の人たちにも影響を及ぼしていくことになる。 立て続けに起きる町での失踪事件、被害者である人物たちはかつて、鳥居の下に積まれたとある石を日高に崩させようとした嫌がらせの当事者でもあった。 行方不明者たちは、それぞれ永井と恋人関係に発展してから、一週間と経たず姿を消している。 鳥居の下に重なる石に刻まれた十人の見知らぬ名前。ヨバリ町が隠している過去の連続自殺、殺人事件。 聞こえるはずのない蝉の声に、永井の皮膚を突き破った血潮が、日高の人生を赤く、赤く染めていく。 永井都香砂という男はナニモノなのか。永井が日高に捧げる執着は、愛となるのか、呪いとなるのか。 特別な存在になれるという恐怖と優越が行き着く最果て。 さなぎからでてくるものがうつくしいとはかぎらない──。怪異系執着ホラーBL
